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立浪監督7不思議


立浪監督。Wikipediaより。
立浪監督。Wikipediaより。

 これまでこのブログでプロ野球のことを書いたことは一度もないが、何を隠そう私は大の野球好きで熱烈中日ファン、つまり “ドラキチ” である。

 3年前、長期低迷する中日ドラゴンズの救世主として颯爽と登場した立浪監督。就任会見で「打つほうは必ず何とかします」と爽やかに言い切って、竜党の心を鷲づかみにしたあの日、いったい誰が3年後のこの惨状を予想したことだろう。

 3年間でまいた種は確実に芽を出し育ちつつあるが、それでも貧打は解消せず、3年連続最下位という惨憺たる現実がもうすぐ目の前にある。

 選手はもちろん、監督もコーチもみんな一生懸命やっているに違いないが、応援していて、あるいは端で見ていてどうしても納得のいかない、どうしても理解できない事柄が数々あった。

 その一端をここに書き並べる。題して「立浪監督7不思議」。

―― 単なるドラファンのため息である。

 

 <不思議その1> 「日替わりオーダー」 固定できないのか、しないのか?

 先発のオーダーが毎試合のようにコロコロ変わった。与田前監督時代もひどかったので、立浪監督になって初めは少しは落ち着いた気がしていたが、気づけばいつの間にか日替わりの毎日。

 固定したくてもできないのか、それとも固定するつもりが最初からないのか。

 そして、突然思いつきのようにやってくる “抜擢人事”。

 試合前に発表されたオーダーを見て、期待感でワクワクするのでなくて、「今日はダメだなあ」―― そんな気分になることが時々あった。実際そんな試合のほとんどは、予想どおり残念な結果に終わるのだった。

 

 <不思議その2> 打てそうにない大ベテランをしつこく起用したのはなぜ? 

 チームの刷新を図り若手を育てようとする方針は、ファンも多くが支持して応援していたと思う。その代償としてベテランの大島やビシエドが徐々に出番を失くしていくのを見るのは忍びなかったが、それも仕方ないと思った。

 なのにその一方で、力が衰えて素人目にも全く打てそうにない福留や中島を、いつまでもしつこく代打で起用したのはいったいなぜか。最後のほうは「代打中島」が告げられると心底ガッカリしたし、相手投手からは完全に見下されていた。そういえば立浪監督1年目には、山下斐紹というのもいた。

 

<不思議その3> 木下、宇佐見、加藤拓・・・石橋を使わないのはなぜ?

 投手を中心とする「守り勝つ野球」を標榜し、レギュラーだった京田と阿部を放出してまで二遊間を強化しようとした。同時に若手の育成に力を注ぎ、岡林や細川、龍空、石川昴、村松、福永、田中幹など若手に多くの出場機会を与えた。

 それなのに、守り勝つ野球のポイントであるはずの中心線、扇の要のキャッチャーは、若手有望株の石橋をほとんど使おうとしなかった。正捕手がいるならまだしも、キャッチャーも日替わりで、木下、宇佐見、加藤拓は全員30代である。キャッチャーだけ若手を育てなくて良い理由は何なのか。

 石橋は昨年の国際大会に、若手主体の日本代表に中日から岡林とともに招集された。中日から呼ばれたのはこの2人だけである。それほどの期待の若手が、この3年間をほぼ2軍で暮らした。

 

<不思議その4> 龍空は嫌いか? クリスチャン・ロドリゲスは好きか?

 人間だから誰でも好き嫌いはあるが、野球に限らず組織である以上それを乗り越えていかねばならないし、そうやってまとめ上げるのがトップの役割であり使命だ。

 なんて、つまらないことを上から目線で言う必要もないけれど、立浪監督の選手起用は時に不可解で謎に満ちていた。水面下で何かあったのでは? と思わず勘ぐってしまうことしばしばであった。

 立浪丸が船出してたった1か月余りで、自ら招聘した中村紀コーチを2軍に降格させた。その後間もなく、「戦う顔をしていない」と試合中に京田を強制送還し、その京田はそのまま復調することなくシーズン終了後にトレードに出された。

 立浪監督の1年目に覚醒の予感を漂わせていたアリエル・マルチネスは、シーズン終了後にまさかの退団となった。育成から辛抱して育ててきて、いよいよという時にクビにしたのだ。それも、のどから手が出るほど欲しい大砲候補をだ。一説には捕手としての起用を求めるキューバ政府と折り合いがつかなかったとのことだが、その後の日本ハムでの起用法を見ると、第3の捕手で使えば十分だったようだ。それでさえ捕手では使いたくなかったのかもしれないが、そのわりには守備に難のある宇佐見をわざわざトレードで獲得して(それも同じ日本ハムから)、守備に目をつむって使っている。

 アリエル・マルチネスを見切ったのは外国人枠の問題もあったに違いないが、代わりに立浪監督自らがドミニカまで足を運んで鳴り物入りで連れてきたアリスティデス・アキーノは、よく言われる「大型扇風機」そのものだった。卓越した打撃理論で知られる立浪監督のお眼鏡にかなったのはいったいどの部分だったのか、今となっては全ては謎だ。 

 立浪監督に見いだされた溝脇は、その1年目には内野の控えながらそれなりの活躍と成長を見せた。それが翌年は次第に出場機会を減らし、シーズン終了後にいきなり戦力外となった。まだ28歳だった。

 外野の守備固めや代走として活躍した加藤翔は、好守でチームの危機を何度も救った。それが今シーズンは突如出場機会を失い、遂に1度も1軍に呼ばれることなくシーズン終盤で引退を表明した。

 立浪監督1年目に京田に代わってショートに抜擢された龍空は、華麗な守備でファンを魅了するとともに立浪監督の信頼を掴んだかに見えた。しかしその後も苦手の打撃を克服できず、すると今シーズンの開幕はまさかの2軍スタート。代わって育成上がりのクリスチャン・ロドリゲスが開幕スタメンに抜擢されてファンをアッと言わせた。今シーズンの龍空は1軍での出番はわずかで、その間に龍空より守備力の劣るベテランが守備固めで重用されるなど、龍空にとっては不遇な1年となった。

 

<不思議その5> 2年連続!内野手の大量補強

 立浪監督就任後2回目のドラフトで、村松、濱、福永、田中幹の4人の内野手を指名した(濱は現在は外野手登録)。近年の中日のドラフトは野手は内外野合わせて2人が定番で、内野手だけで4人はそれ自体が異例だった。

 にもかかわらず、翌年のドラフトでも2位と3位で内野手を指名した。

 この年の中日は最下位のアドバンテージがあり、中日の2位はウエーバー方式で12球団中13番指名の「ほとんど1位」だった。しかもこの年は大学生投手の豊作年で、「1位候補」と報じられた逸材投手が何人も残っている中での内野手指名だった。

 驚きはこれで終わらない。そのうえさらに、他球団を戦力外になったベテラン内野手、中島、山本、板山をかき集めたのだ。もともとレギュラー候補として、守りだけなら12球団トップクラスの龍空やゴールデングラブ賞2回の高橋周がいて、育てなければいけない未完の大器、石川昂がいる。さらには内外野守れるが本職は内野のカリステもいる。そこへ2年続けて内野手を大量補強したのである。

 そしてとどめは、育成契約のクリスチャン・ロドリゲスを支配下登録するやいなや、いきなりショートで開幕スタメンに抜擢したのだった。―― かくして中日内野陣の大渋滞が巻き起こった。

 有望な選手は多ければ多いほど良いというものでもない。ポジションや年齢のバランスが大切で、ポジションが被りすぎれば2軍でさえ出場機会が与えられない選手が出てくる。龍空は2軍で本職でないサードを守らされ、ベテラン勢が2軍調整した際には十分な打席が与えられず、調子が上がらないまま1軍に復帰したという。

 競争、競争と言いながら、公平な競争や育成の場が保証されない事態が生じている気がしてならない。

 

<不思議その6> 盗塁もできない “足のスペシャリスト” って?

 こういう言い方は大変辛辣で不適切かもしれないが、せっかく勝負どころで代走で起用しても盗塁もできないし、それどころか走塁ミスを犯したり、果ては牽制で刺されたりする “足のスペシャリスト” を、最初から最後まで重用し続けた(途中でほんの一時期2軍に落とした)。

 ルーキーながら抜群に足が速いので戦力になることを期待して使ったに違いないが、要は実力不足で、2軍でもっと鍛えてから使っても遅くはなかった。

 

<不思議その7> 「ゾーンで勝負しろ!」は正しいのか?

 最後に、誰も指摘していない気がするが、私が最初からずっと疑問に思っているのがこれだ。

 立浪監督は就任当初から「投手はゾーンで勝負しろ」と繰り返し発言してきた。「ゾーン」とはもちろん「ストライクゾーン」のことで、これが単に「逃げるな」ということを言いたいだけなら問題ないかもしれないが、文字どおり「ゾーンで勝負しろ」となるとちょっと話は違ってくる。

 今シーズンの開幕投手を任された柳は、追い込んだ後の勝負球はストライクゾーンからボールになる球を振らせるのが彼本来のスタイルである。ところがその球に打者が手を出してくれないと、ボール、ボールとなってカウントを悪くする。そのとき「ゾーンで勝負しろ」という立浪監督の顔が浮かんでゾーンに投げ込んでは痛打される。今シーズンの柳はこの繰り返しで自分を見失っているのではないかと心配する。

 巨人のエース菅野は、「ピンチになるとギアを上げる」と言われているが単にギアを上げるだけでない。ピンチになるとほとんどゾーンに投げてこないのだ。打者にとってはチャンスなので初球から積極的に振りにいくが、その心理を逆手にとってストライクゾーンからボールになる球ばかり投げて、打者はこれを振らされて凡打の山を築く。

 プロは結果がすべてとまで言われる中で、手段や方法で選手を縛るのは間違いだと私は思う。スタイルを確立している中堅やベテランは、これでは辛いのではないか。 

(完)