大型で非常に強い台風14号の接近に備え、伸び放題になっていた庭のコニファーを剪定していた9月17日(土曜)午前のこと。3本のうち2本の剪定をほぼ終えたその時だった。残りの1本の周りを、アゲハチョウが何やらしきりに飛び回っている。
何をしているんだろう? 吸蜜か? 産卵?
―― そんなバカな。冗談でも絶対ありえない。何しろコニファーだよ、コニファー。花も咲かなきゃ、葉も食えぬ。動物との共生戦略によって繫栄した被子植物と反対に、動物に食われることをかたくなに拒んで、文字どおり身を固くしてきたのが裸子植物である。
とその時、件のアゲハチョウがコニファーの枝先(葉先)に翅を震わせながら一瞬止まり、すぐ飛んだ。それは産卵行動のように見えた。息をのんで見守る私の目の前で、二度三度と腹端を押し曲げるような行動を繰り返した。
しまった! 大失態だった。庭仕事をする時にはカメラかスマホをポケットに入れるよう心がけているつもりが、またしてもやらかした。カメラがないことに気付いて慌てて家の中へ駆け込み、カメラ片手に戻った時にはすでにアゲハチョウの姿はなかった。
祈るような気持ちで産卵行動をとった枝先を調べると…あった! 運よく1卵だけ見つかった。
産卵位置は写真〇印付近。地上1.5mほどの高さ。コニファーの樹種は不明。斑入りが特徴の、他であまり見ない種類である。
それにしても、どうしてアゲハチョウは食樹と間違えたのか。アゲハチョウの食樹はサンショウやカラタチを含むミカン科の植物である。コニファーとは似ても似つかない。
しかし、冷静に考えると一点だけ共通点が思い当たる。芳香つまり苦味成分である。
アゲハチョウはミカン科の植物に含まれる苦味成分を幼虫の時に体内に取り込むことによって、幼虫はもちろん、成虫になっても天敵である鳥の捕食から身を守っていると考えられる。剪定したことによってコニファーの芳香がまき散らされ、これに誘引されてアゲハチョウがやって来たのではないか?
それにしても、随分ひどい間違えではある。
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