新型コロナ禍で県境を越える移動は自粛せよとのことで、今年はGW以降1か月ほど愛知県内でミヤマカラスアゲハを追い求めた。ギフチョウといえばブルーネットであるように、ミヤマカラスアゲハといえばやはり赤ネットだろう。しかし、私が使っている赤ネットは、赤と言うほど赤くない。
もう20年以上も昔、むし社のツアーで初めてパプア・ニューギニアへ行く際に、名古屋昆虫館(当時)に赤ネットを買いに行った。真っ赤なネットが欲しかったがなくて、仕方なく妙なピンク色のネットを買って帰った。薄めのサーモンピンクのような色あいで、はっきり言ってあまり気に入らなかったがそれしかなかったので仕方ない。
半信半疑でこれをパプア・ニューギニアで試したところ、話には聞いていたが本当にトリバネアゲハが樹冠から羽をV字にして急降下してくる様(さま)に狂喜した。オオルリアゲハもスポスポ採れた。
しかし、その後このサーモンピンクのネットを使う機会は思いのほか多くなかった。マレーシアのジャングルに足繁く通ったが、マレーシアでは主な狙いはタテハやシジミなので、もっぱらグリーンのネットを愛用していたのだ。国内ではほとんどギフチョウばかりをやっていて、たまにゼフィルスやキマルリをやる程度で、赤ネットの出番は皆無に等しかった。
先日、愛知県豊田市の山中でヤマツツジに飛来するミヤマカラスアゲハを待っている時に、ようやく気付いた。
これだ! そうか、これだったのか。
正にヤマツツジの色そのものだった。制作者の意図に、20年以上の歳月を要してやっと気付いた。と同時に、そのあまりの見事な出来栄えに感動に打ち震えた。染物の色をこれほどまでに狙いどおり忠実に出すことはきっとかなり難しいはずだ。
それにしても、我ながらよくもこれまで気付かずにいたものだ。言い訳にしかならないが、考えてみればヤマツツジの咲いている時期にヤマツツジの咲いている場所へ行くことはほとんどない。ヤマツツジといえば5月。5月といえば山ギフ。だから飛騨や北陸の山地、北信など、雪深い所へばかり行っていた。ヤマツツジはもともと雪国には少なく、太平洋側を中心に自生しているらしい。飛騨の山中で見かけるツツジといえば、たいていはムラサキヤシオである。
それにしても、こんなマニアックな色はきっともう入手困難だろう。大切に使おうと思った。そう思うと、今さらながら急に愛着が湧いてきた。
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