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今さら突然、河合奈保子。

 河合奈保子 ―― 言わずと知れた80年代のスーパーアイドルのひとり。私にとって3つ年下の、正に同世代である。しかし、当時の私はむしろ松田聖子ファンだったので、河合奈保子のことは正直あまり記憶にない。当時は、もう少し落ち着いた感じの大人の女性が良かったのかもしれない。

 

 このところ新型コロナ禍の影響で家にいる時間が長く、You Tubeで音楽を聴きながらパソコンに向かうことがたびたびあった。懐かしい昭和歌謡を聴いていたときに、何気に河合奈保子の動画をクリックした。

 えっ、これが河合奈保子?!

 耳を疑った。河合奈保子って、こんなに歌が上手かったっけ‥?

 映画音楽のバラードを、気品ある美しい声でしっとりと歌い上げていた。アジアの歌姫テレサ・テンとのコラボでも、少しも見劣りしていない。私の知らない大人の女性の河合奈保子が、そこにはいた。

 次の「ハーフムーン・セレナーデ」は、何と河合奈保子本人が作曲していた。自作の曲をピアノを弾きながら歌い、しかも壮大なバラードに仕上がっている。河合奈保子23歳の時の曲で、そこそこ売れたようだが私はこれまで全く知らなかった。どうやらこの曲のころから、アイドル路線からの脱却を目指して河合奈保子自身の作曲による曲をたくさんリリースしているが、結局あまり成功しなかったようだ。

 

 こちらの3曲目「誰もいない海」などは、NHKの「うたのおねえさん」もビックリだろう。

※「動画を再生できません。この動画はYou Tubeでご覧ください。」と表示が出たときは、その表示部分をクリックするとYou Tubeが別ウインドウで開いて視聴できます。

 今聴いてみると、歌は上手いし、いい曲もある。なのに、どうしてシンガーソングライターあるいはボーカリストとしての河合奈保子は正当に評価されなかったのだろうか。

 答えは簡単だ。私のようなヤツが多かったからに違いない。つまり、アイドル時代のイメージが強すぎて、そもそも聴こうともしなかった。聴いたとしても、先入観が邪魔してピンとこなかったかもしれない。

 30年以上の歳月を経て、中国を中心に河合奈保子の動画がインターネットで拡散されて人気を博しているらしい。「ハーフムーン・セレナーデ」は「月半小夜曲」の名で、大勢の中国人歌手がカバーしている。先入観なく聴けば、いいものはいいに決まっているのだ。

 こうして30年以上も遅れて、今さら突然、河合奈保子のファンになった。