2019年6月1日から8日まで、ベトナム北部のクックフォン国立公園を訪れる機会に恵まれた。当地はハノイから南南西へ約100km。熱帯というより亜熱帯といったほうが正しい。6月上旬のこの時期は、これから本格化する雨季の入口ぐらいに当たるようだが、滞在中、夜には何度か降ったが幸運にも日中は全く降らなかった。
実質6.5日間の滞在中に出会った蝶やその他あれこれについて、シリーズでお届けする。
蝶の吸水集団
各所でたくさんの蝶の吸水集団に出会った。
上の写真は、シロチョウの集団の中にオナガタイマイやミカドアゲハなどのGraphiumが混ざり込んでいる。シロチョウもたくさんの種類がいて、それぞれが完全に混ざり合って吸水している。
(カワカミシロ、クモガタシロ、ベニシロ、タイワンシロ、ネリッサマルバネシロ、ナディナマルバネシロ、オナガタイマイ、ユーリピルスタイマイ ほか)
一方、たいていはこの写真のように、混ざり合わずに同じ仲間同士でかたまっていることのほうが多い。これは先に吸水に降りた個体を他の仲間が見つけて集まるためと言われているが、では最初の写真のようにごちゃまぜになるケースとはいったい何が違うのだろう。
(チャイロタテハ、テミレイシガケ、コクレスイシガケ、キチョウの一種、ナディナマルバネシロ、マダラシロ、タイワンシロ、クロアゲハ、ジジミチョウ2種)
こちらは、Graphiumの集団の中に、ネリッサマルバネシロが小さな体で乱入しようとしているところ。多分、同系色のオナガタイマイ(中央)を仲間と誤認したのだと思う。
(ミカドアゲハ、ユーリピルスタイマイ、オナガタイマイ、ネリッサマルバネシロ)
コクレスイシガケチョウは、なぜかいつも「おしくらまんじゅう」をやっている。
また、一般に吸水に来るのはほとんどが♂と言われているが、コクレスの場合はかなりの割合で♀が混ざる。肌色っぽいのが♀で、この写真の中に少なくとも5♀がいる。
(コクレスイシガケ、テミレイシガケ)
わずか6.5日間の滞在中にも、吸水に集まる蝶の種類は微妙だがハッキリと変化があった。初めのうちアゲハは少なかったが、最終日になって急に数を増し集団を形成していた。
「キャーー、私も仲間に入れてーーーーーッ!!」
ってな感じかな。
(タイワンモンキアゲハ、クロアゲハ)
コンクリートの壁に無数のカワカミシロが群がっていた。意外に敏感で、写真を撮りながら迂闊に近寄ったら、みるみる紙吹雪のように舞ってしまった。
全然気付かなかったし改めてこの写真で見ても分からないが、あらかた飛び去って残りわずかになったその場所に、何と1頭だけツマベニチョウがいた。
(カワカミシロ、クモガタシロ、ベニシロ、ネリッサマルバネシロ、メジロキ、ウスキシロ、ツマベニチョウ、Graphium ほか)
最後の極め付きはこれだ!
スソビキアゲハの吸水集団。アオスソビキとシロスソビキの2種が混ざっている。この写真で見てもおよそ蝶に見えないが、現物はもっと蝶に見えない。チョロチョロとすばしこく飛び回って、ハチか何かのようにさえ見える。知らない人が見たらゾッとするかもしれない。
よく見てみると、いたるところでポンピング行動をしている。吸った水を腹端からピュッピュッ、ピュッピュッと水鉄砲のようにひっきりなしに飛ばしているのだ。それもわざわざ腹端を上げて遠くに飛ばそうとしているか、あるいは隣りのヤツにかけようとしているように見える。
これって逆に、物凄い勢いで水を吸っているということだ。そのためには、ご覧のような水がたくさんある場所でないとできない。トンボじゃあるまいし他の蝶はこんな水の多い場所は嫌って降りないから、スソビキだけの集団が形成される。
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大島俊文 (月曜日, 15 7月 2019 10:34)
蝶の集団は、日本ではあまり見られないと思いますが、南方はやはり違うんですね。
永遠の昆虫少年(サイト管理者) (月曜日, 15 7月 2019 22:22)
日本でも夏の暑い時期には普通に蝶の吸水集団は見られます。
ただ、昔と違って開発が進んで蝶の数そのものが減ってしまったのも事実です。
学生の頃、夏の信州の高原で、何百頭というスジボソヤマキチョウの大吸水集団に出会ったのを懐かしく思い出します。