中国の故事に出てくるという不老長寿の果物、その名も仙桃(せんとう)。なんでも “激レア” のようで、日本国内でこれを入手することは相当困難らしい。そんな珍しい果物が、たまたま偶然私の手元にある。
この果物について知ったとき、私はふと2千円札のことを思い出していた。珍しいという以外に特にそれ以上の価値がない。だからレアものなのに手に入れても大して嬉しくない。この果物も同じで、つまりとりたてて美味しくないらしい。
大きさはリンゴ大ぐらいで、切ると真ん中に大きな種があるが、果肉は柔らかくて皮は包丁で簡単にむける。
あらかじめインターネットで調べていて先入観というか警戒感があった。
「果物なのに水気がなくてパサパサ」
「ゆで卵の黄身みたいな食感で、口の中の水分を全部もっていかれる」
「飲み物がないと喉を通らない」
「蒸したサツマイモみたいでスプーンですくって食べる」
だからマグカップにたっぷりの温かい中国茶を用意して、これを飲みながら気合を入れて食べようという考えだった。
見た目からはパサパサした感じは想像できないが、実際に食べてみてもパサパサ感なんて微塵もなかった。確かにジュージーではないが、やや水気の乏しいパパイヤといった食感。飲み物がないと喉を通らないということも全くなくて、むしろ柔らかくて食べやすい。
おそらく皆さんは、よく熟する前に食べているのではないだろうか。私は表面がぶよぶよに柔らかくなって、かすかに発酵臭を放つほどまでに寝かした。
ところで「お味のほうは?」と聞かれると、「……」
ほのかな甘みと香りがあるが、特段美味と言うほどではない。何かに例えろと言われれば、
「甘さの足りないパパイヤと何かをたして3で割ったような味」
とでも答えようか。パパイヤに似ている以外に例えようがないうえに、どこか割り切れない微妙な味‥。
お前の言うことは訳が分からん、と言われそうだが、自分でもよく分からない。結局は2千円札と同じで中途半端なのかもしれない。という訳の分からんオチでお許しいただきたい。
コメントをお書きください
くま (火曜日, 06 12月 2022 11:04)
かにすてる だね