後悔しない家づくり(11)ー わが家のプチ自慢:玄関ドア

 私が、家の機能や間取りに徹底的にこだわった次に今度は外観にこだわるなかで、雅恵は外観にはあまり興味を示さなかった。ところが、最後に玄関ドアを決める段になって猛烈なこだわりを見せた。外観にはこだわらないと言っていたはずの雅恵が、どうしてそんなに玄関ドアにこだわるのかと尋ねると、「玄関は家の顔だから」という返事。そうか、やっぱり顔にはこだわるんだ。フッフッフッ、だからこのオレを選んだんだな(←単なる独り言)。

 営業マンから「このシリーズの中から選んでください」と手渡されたカタログには、茶(木目調)、白、モスグリーン、ミストグリーンの4つのカラーバリエーションがあった。その中では木目調が圧倒的にラインナップが豊富で、次に多いのが白、モスグリーンは数種類ほどで、ミストグリーンに至っては付け足し程度という感じだった。

YKK ヴェナートのカラーバリエーション(WEBカタログより)
YKK ヴェナートのカラーバリエーション(WEBカタログより)

 わが家の外観は、「南欧風」とは言っても「失敗例」のところで触れたように「なんちゃってコートダジュール」なので、ドアだけ本格木目調にしても浮いてしまう気がした。サッシや雨どいが白なので、玄関ドアも白でコーディネートするのが無難と私は考えていた。

 ところがである。雅恵が白は絶対嫌だと言いだした。理由は、アパートみたいで安っぽいから。では木目調はどうかと聞けば、アルミ製なのに木目調なんてイミテーションそうろうだからもっと嫌だと言う。では何がいいのかと問えば、意外にもモスグリーンがいいと言う。どうやら見学に行ったモデルハウスの玄関ドアがモスグリーンで、それが気に入ったらしい。

 困った。さんざん外観にこだわった私だが、実は機能にはもっとこだわっている。わが家の玄関は南向きで日あたりがいいので、モスグリーンは熱を吸収して冷房効果を損ねる心配がある。外観にこだわるあまり機能が低下したのでは、本末転倒の最たるものだ。そもそもモスグリーンは飽きる気がするし、モデルハウスは「本格南欧風」なのでモスグリーンが映えたが、「なんちゃってコートダジュール」のわが家ではきっとガッカリする。でも、女という生き物は好き嫌いに関しては理屈抜きなので、これを説得するのは至難の業と思えた‥。

 ところで、残るミストグリーンはどうだろうか。それ自体は悪くないが、わが家の外観にマッチするかどうか自信がない。担当の営業マンに施工例を紹介してもらって現物を見に行こうと思い尋ねると、これまで当社では取り扱った実績がないという。そうか、こんな奇抜な色を選ぶ人はいないんだ。いよいよ迷い始めた‥。

 そうだ! もえぎヶ丘へ行ってみよう。

 愛知県犬山市もえぎヶ丘。それは国道41号線を犬山から美濃加茂方面へ向かう途中、左手の山間丘陵地にこつ然と現る新興住宅地。南欧風を始めお洒落で立派な新築物件が無数に建ち並ぶ。隣に位置する四季の丘も合わせると500棟を優に超えると思われる。以前、車で41号線を通ったときにその存在に気づいて知っていた。あそこへ行けば、きっとミストグリーンの玄関ドアに出会えるに違いない。

もえぎヶ丘の邸宅群(Googleマップより)。
もえぎヶ丘の邸宅群(Googleマップより)。

 早速、週末に雅恵と二人でもえぎヶ丘へやって来た。車をゆっくり走らせながら、隅から隅までシラミつぶしに探した。当時はまだ空き地が目立ったとはいえ、それでも無数に建ち並ぶ邸宅群の中からたった2軒、目指すミストグリーンの物件を見つけだした。

 ドア自体はいい感じだった。しかし、2軒とも外壁は白に近い色で屋根は地味なカラーベストというおとなしめの外観で、玄関ドアだけ少し冒険した印象だった。わが家の外観とはテイストが違いすぎてあまり参考にならなかったが、やるだけのことはやった満足感からか吹っ切れた気がして、ミストグリーンに決定することにした。 

道路から丸見えの、わが家の玄関ドア。
道路から丸見えの、わが家の玄関ドア。

 わが家はオープン外構にしたため、はからずも玄関は道路から丸見えとなった。

 ミストグリーン。この選択が成功だったのか失敗だったのか、それは見る人によって感じ方が違うだろう。でも、それを選んだ過程も含めて、雅恵と私の二人が満足しているのだから、これでいいのだ。