もし、自分が契約した業者が途中で倒産したら‥。
最悪の場合、マイホームの夢が霧消するだけでは済まない。一生、実体のない住宅ローンを払い続け、同時に、住んでいる賃貸住宅の家賃も払う。何の落ち度もないのに、そんな多重債務者のような暮らしを背負うことになるかもしれない。
わが家が完成した4か月後に、大手ハウスメーカーの富士ハウスが破綻した。私自身、富士ハウスとは契約しなかったが濃密に接触していたので、富士ハウスの営業マンの顔が浮かんでとても他人事とは思えなかった。そしてその1年後には、わが家を建てた業者がまさかの倒産。渡り終えた橋が背後で崩落したような、震えが止まらないような事件だった。
私の企画コンペに参加した3社のうち、10年経った現在、変わりなく営業しているのは1社だけである。こうして考えると、業者の倒産というのは他人事でも何でもない。これから契約しようという人は、自分の身は自分で守るという意識が必要である。
しかし、そうは言っても相手企業に倒産の恐れがないかどうか経営状況を知ることは、実際問題として不可能に近い。富士ハウスの場合、破綻の直前に契約金として2千万円を支払った人がいたという。詐欺罪で訴えたが不起訴になった。破産申請までの手続きは秘密裏に行われるのが世間の常なので、被害者の心理としてそれがどんなに理不尽であっても、詐欺罪を立証するのは困難ということらしい。
ではどうすれば良いのか? 業者の倒産に遭わない方法は私には見つからないが、不幸にして遭ってしまったときに被害を最小限に食い止める方法なら2つ思いつく。
1 支払いはなるべく細分化する
多くの業者は、契約金額を3等分して着工前に3分の1の支払いを求めるという。ところが富士ハウスは、着工前に契約金額の7割近い額を支払わせていたらしい。3千万円の契約なら2千万円を支払わせていたことになる。この時点ですでに限りなくブラックだ。業者側の言い分としては、事前に資材をあらかた調達する必要があるということのようだが、7割ともなると一部を資金繰りに当てていたことはほぼ間違いない。
そこで、例えば3千万円の契約なら5百万円ずつ6回に分けて、工事の進捗に合わせて支払う契約を結ぶ。着工前にはどんな名目であろうと5百万円しか払わないということだ。このことを契約書に盛り込む。もっと言えば、事前の企画コンペの段階で契約条件として明文で示す。契約条件なので、このことについて業者側がなんと主張しようとも、嫌なら初めから企画コンペに参加しなければいいだけのことだ。非常識と言われようが世間知らずと言われようが、素人と言われようが変わり者と言われようが、自分の身は自分で守るしかない。
2 特殊な工法を用いる業者を選ばない
富士ハウスは独自工法を用いていたため倒産した時点で建築途中の物件を引き継いでくれる業者がなかなか見つからず、見つかったとしても契約条件が悪く、結果として被害が拡大したという。そこで、なるべく一般的な工法の業者を選んでおくことが、いざという時に多少なりとも救いになる。
ところが、ハウジングセンターへ行ってみると、20棟建っているモデルハウスの工法が15種類あったりする。ほとんどの業者が「オリジナル工法」を売りにしているのだ。つまり、業者は他との差別化を図るために独自の工法を編み出し、あるいは従来の工法を少しアレンジしただけのものに独自の名称を付けるなどして売り込みに躍起になっているのだ。「オリジナル工法」と言えば聞こえはいいが、賢い消費者は、このような消費者のニーズに目を向けるよりも企業側のニーズによって消費者を振り回すことに熱心な業者に付き合わないことだ。
では、一般的な工法とは何を選べばよいか。現在のわが国の木造住宅で一般的と言える工法は、木造軸組工法(在来工法)と2×4(ツーバイフォー)工法の二つしかない。私はズバリ、2×4工法またはその応用形である2×6工法が、これからの家づくりの王道だと思っている。
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