後悔しない家づくり(6) ー 間取り図を描こう!

 建売りでなく注文住宅で家を建てる醍醐味は、大きく2つある。ひとつは業者を好きに選べることで、もうひとつは間取りを自由に決められること。

 なのに、間取りを業者に任せっぱなしにしたり、あるいは業者が提案するプランの中から選んで決める人がいるらしい。アンビリーバボー! こんな楽しいことを自分達でやらなくてどうする。このシリーズの第2回で、私の家づくりで一番楽しかったのは建売りめぐりだったと書いたが、次に楽しかったのは間取りをあれこれ考えることだった。

 でも、間取り図なんて描いたことないぞ。と言われそうだが、私も描いたことなんてなかった。それに誰も教えてくれなかったけれど、でも全然難しくなかった。まずは100均で1mm方眼紙を買ってきて、これに鉛筆を使ってフリーハンドで描く。見本は新聞に入ってくる折込広告に、建売りの間取り図がいくらでも載っている。決まりごとがあるとすれば、1畳の広さを10mm×20mmで描くことと、壁の厚みは無視すること。それ以外は何もない。

 手順としては、間口と玄関の位置を決めるところから始める。と言っても、よっぽど広い敷地でない限り敷地の広さと建ぺい率、それに公道との位置関係から、間口も玄関の位置も自ずと決まってしまう。

 次に、部屋の広さと収納スペース、日当たりと風通し、生活動線と生活音など、実際の生活シーンを想像しながら間取り図を描き進める。収納スペースを部屋の北か西に取ることで、南や東に窓を確保する。そんなの当たり前のようだが、実際にやってみると意外に上手くいかない。こっちがいいとあっちがダメで、答えの見つからないパズルのようで、だからやり始めるとハマるのだ。でも、ハマりすぎて懲りすぎるのも良くない。間取りはなるべくシンプルにすることで家具の配置や整理整頓、掃除が楽になり、動線や風通しも良くなる。最後の仕上げで部屋の出入口の位置を少し工夫したり、ドアの代わりに引き戸にしたりでデッドスペースをなくせることがある。

 参考のために沢山の建売りの間取り図を見ていくと、一部の業者では風呂場が2階にあったりして目が点になるが、日々の生活やエネルギー効率、住宅性能やメンテナンスなど総合的に考えたとき、あまり奇をてらったようなことはしないほうが賢明と思う。

雅恵が描いた間取り図の数々。
雅恵が描いた間取り図の数々。

 こんな感じで少し要領をつかんだところで、今度は雅恵に描き方を教えてみた。するとどうだ。初めのうちこそ、「この部屋、出入口がないぞ」とか、「なんで2階の方が1階より広いんだよ」とか、天然ぶりを発揮して笑わせてくれたが、すぐにみるみる上達して私を驚かせた。雅恵が描いた間取り図に私があれこれ難癖を付けてダメ出しすると、翌日仕事から帰ってくると思わずうなるような修正案が出来ていたりした。

 こうして、ほんの短期間のうちに雅恵は沢山の間取り図を描いた。最初はまるで駄目かと思ったのに、天然と天才は一字違いだと誰かが言っていたのを思い出した。雅恵に才能があったのか私のアドバイスが良かったのか定かでないが、後に雅恵の勤務先の事業所が閉鎖して次の職を探していたとき、突然、「CAD(※)を習ってみたい」と言い出したのは、この時の経験がよほど楽しかったからに違いない。

※ CAD(キャド):コンピューターを使った製図システム。

(つづく)