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正統派!自家製 栗きんとん の作り方

■ 正統派の手法1 山へ栗を拾いに行く

 まずは材料となる栗を山へ拾いに行く。

「そこからかよ。付き合ってらんないから、わたしゃスーパーへ栗を買いに行くよ」

とおっしゃる、そこのあなた。そんな中途半端な根性では、とてもじゃないが自家製栗きんとんは作れません。だったら最初っから和菓子屋へ栗きんとんを買いに行けーッ!

 なんて上から目線で言うほどのことでもなく、単に山へ栗を拾いに行くのが楽しいのだ。どうだ、まいったか。

路上に落ちている柴栗。
路上に落ちている柴栗。

 ということで、ではどこへ行けば栗が拾えるのか。 ―― 山ならどこでも拾える。そう、栗は温帯性落葉広葉樹林つまり雑木林にごく普通に見られるので、郊外へ車を走らせ幹線道路から離れて少し山道へ入れば、そこが一面の杉の植林でないかぎり、そこかしこの路上に栗は落ちている。

 蝶屋諸氏なら、ゼフやキマルリの採集の際に栗の花がポイントになるので、栗のありかに心当たりがあるだろう。そこで、その場所を目指して車を走らせると、それよりずっと手前で路上に散らばる栗を見つけ、きっと目的の場所までたどり着けない。

 問題は場所よりも時期かもしれない。栗の旬は低山地なら9月で、遅くとも10月半ばごろまでらしい。栗は秋の味覚だからと秋が深まってから出かけると、落ちているのはイガばかりで中身はもぬけのから、ということになりかねない。 

アスファルトの路上の柴栗。
アスファルトの路上の柴栗。
青々としたイガから顔を出す柴栗。
青々としたイガから顔を出す柴栗。

 栗は見かけによらず乾燥に弱く、アスファルトの路上に転がっているものはすぐに干からびてぺちゃんこになってしまう。そこで、上の写真右のように、青々としたイガから顔をのぞかせているようなのが新鮮で狙い目と言える。

 

山で拾ってきた「ふぞろいの柴栗たち」と、こちらも「拾い物」の銀杏。
山で拾ってきた「ふぞろいの柴栗たち」と、こちらも「拾い物」の銀杏。

 山に自生している栗は柴栗(しばぐり)といって、栽培されているものより実が小粒で半分ぐらいの大きさしかない。写真右の銀杏も近所の道端で雅恵が拾ってきたもので市販のものよりかなり小粒だが、こうして見ると柴栗はドングリに毛が生えたというか、トゲが生えたぐらいの大きさしかない。

 

でかい栗が落ちていると思ったら・・
でかい栗が落ちていると思ったら・・
こちらは栽培の栗でした。
こちらは栽培の栗でした。

 山で柴栗を拾うときは、必ず路上に落ちているものを拾うこと。いくら自生している栗といっても、地面に落ちているものは地主さまの所有物である。そもそも、山の中にわけ入って地面に落ちている栗を探すよりも、車で流しながら路上に落ちているものを探すほうが超ラクチンである。

 では、公道上に落ちているものなら何でも拾って良いかというと、上の写真のように明らかな栽培の栗を拾うのはもってのほかと思う。これを拾うと「占有離脱物横領」に当たるかどうかは知らないが、くれぐれもマナーはしっかり守りたい。 

 

■ 正統派の手法2 チルド室で1週間ほど寝かせる

前の晩に水につけておく。
前の晩に水につけておく。
圧力鍋だと短時間でふっくらゆであがる。
圧力鍋だと短時間でふっくらゆであがる。

 栗は低温下で澱粉が糖に変わって甘味を増すという。なので、すぐに食べたいのを「じっと我慢の子」になって、チルド室で1週間ほど寝かせる。このとき乾燥しないように、しっかり密封できる袋に入れる。いよいよ作戦を実行に移す日の前の晩、寝る前に忘れずにチルド室から出して水につけておく。ゆでる際には、圧力鍋だと短時間でふっくらゆであがる。

 

ゆであがったら包丁で半分に切る。
ゆであがったら包丁で半分に切る。
中身をスプーンでほじくり出す。
中身をスプーンでほじくり出す。

 ゆであがった栗がある程度冷めたら、包丁で半分に切ってスプーンで中身をほじくりだす。欲を出してあんまり小粒の栗を拾ってくると、このときになって後悔する。(経験者は語る。)

 

■ 正統派の手法3 余計なものは混ぜない

 クックパッド先生にお尋ねすると、栗きんとんのレシピにも実にいろいろあって、つなぎに片栗粉を混ぜたりマーガリンを少量入れるなんていうものまである。しかし、正統派は余計なものは一切混ぜない。砂糖を適量と塩少々のみ。

 

すりこぎでつぶしながらよく混ぜる。
すりこぎでつぶしながらよく混ぜる。
ラップにくるんで形を整える。
ラップにくるんで形を整える。

 あとはすりこぎでつぶしながらよく混ぜる。つなぎなんか使わなくても、栗が新鮮で乾燥していなければ、混ぜるのがしんどいほどに十分粘りが出る。明日の朝は肩こりが辛いぞ、きっと。

 十分混ぜ合わせたら、適当な分量ずつラップに取って、軽く回しながら握って形を整える。誰だか知らないが、右の写真のおにいさん手つきいいね。

 

ちょっとお洒落に、自家製栗きんとん雅恵スペシャル!
ちょっとお洒落に、自家製栗きんとん雅恵スペシャル!

 テーブルの上に適当な大きさに切ったラップをあらかじめ並べておいて、形が整ったらこれに包んで乾燥しないように首を紐でしっかり結んで出来上がり。どうだ、この出来栄えなら、よそ様へ差し上げても恥ずかしくないぞ。

 

こんなに沢山出来ました。
こんなに沢山出来ました。

 以上で自家製栗きんとんの出来上がり! 作るのは大変だけど、食べるのはあっと言う間だよ。文責:永遠の昆虫少年、監修:雅恵、でした。

 

■ おまけ

 私たち夫婦が栗きんとん作りに精を出しているちょうどその頃、母は親戚からいただいた渋柿で、干し柿作りに精を出していた。

 いったい、どこの田舎の農家じゃ!