台北賓館は、日本統治下に日本総督の官邸として建てられ、現在は台湾政府が迎賓館として使用しているらしい。私の姉夫婦は、仕事の関係で以前から台湾を頻繁に訪れているが、旧正月明けの2月18日-21日、取引先の新年会に招かれて訪れた際に、年に1回だけ一般公開されるという台北賓館へ初めて入ることが出来たという。
さすがの台湾もまだ肌寒さを感じ見かける蝶も少ないなか、台北賓館の建物の中で、廊下の天井から吊り下げられた照明の傘に張り付くように静止しているイシガケチョウを発見。義兄がわざわざ写真を撮って送ってきてくれた。
イシガケチョウは自然界でも葉裏にピタリと張り付くように止まる習性があり、お得意のポーズである。羽の白い部分は元々鱗粉があまりのっていない半透明状なので、照明の光が透き通って、あたかもデザイン画のように浮き立って見える。亜熱帯系の蝶としては派手派手しさがなく、荘厳でシックな建物の雰囲気に溶け込んで無彩色の絵のように、さり気なく一体化しているようすである。
イシガケチョウは、日本では四国、九州を中心に西日本の暖地に普通とされる。私自身は和歌山方面へせっせと通った若かりしころ、三重県の尾鷲市から和歌山県熊野市へ抜ける国道42号線沿いで何度か本種を見かけた記憶がある。また、尾鷲市の山中でも渓谷を詰めるとしばしば本種の姿を見ることができた。
しかし、いずれも照葉樹林に囲まれた山中であり、下の写真から分かるように大都会の真ん中で本種が建物の中に迷い込むとは驚きである。この程度の緑で生息可能ということなのだろうか。ちなみに、私が足繁く通っているマレーシアにはきょうだい分のマエナリスイシガケチョウ Cyrestis maenalis が生息するが、ジャングル周辺には普通な本種も市街地では見かけた記憶がない。
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