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真夏の暖房便座

 先日、ある施設でトイレを使ったら便座に暖房が入っていた。8月も半ばのことである。スイッチを切ろうにも、どこをどう触れば良いか分からない。それに、悪いことにトイレの部屋自体あまり冷房が効いていないために暑く、加えて足元ならぬ尻元?からじわじわ熱が上がってきて、たまらず汗が吹き出す。一刻も早く用を済ませてその場を脱出しようと試みたが、焦れば焦るほど出るべきものはスムーズに出ず、汗ばかりが余計に吹き出す。(食事しながら読んでいる人いないよね。)

 しかし、いくら何でもこれまでずっと暖房入れっぱなしってことはないと信じたい。きっと、私の前に使った誰かが悪戯か嫌がらせでスイッチを入れたか、もしくは掃除のおばさんが間違えてスイッチを触ってしまった、ということにしておこう。

 だいぶ前だが、ジャフメイトで読んだ記事にこんな話があった。スウェーデンだかノルウェーだか北欧の人が日本に来て、初めて暖房便座というものを知ってたいそう驚いた。私の国は日本よりもずっと寒いけれど、こんなものは私の国にはないと。

 かの人は、日本の「おもてなしの心」に感動したのではない。一日のうち便座に座る時間はほんのわずかなのに、そのわずかのために24時間電気を入れっぱなしにするなんて、こんな無駄なことをして日本人は平気なのかと驚いた。北欧といえば、スーパーの牛乳を賞味期限の短いものから選んで買うというお国柄である。人類はみな「宇宙船地球号」の仲間だと思っていたが、どうやらそうでもない人が世界にはいるらしい。かげがえのない地球に対する冒涜(ぼうとく)であると。

 かの人には、日本においては稀とはいえ真夏でも暖房便座の電源が入っていることがあるという事実は、絶対に知らせないほうがいいと思った。