こういうタイトルを付けること自体、完璧「オヤジ」の証拠である。そもそも、「永遠の昆虫少年」などと自称した時点ですでにオヤジを露呈している。オヤジの習性として、若者言葉はうさんく臭くて聞くに堪えないと思いつつ、こっそり使って若ぶってみたりする。
そんなオヤジにとって、以前からずっと気になっているいまどきの若者言葉がある。
「ムリ」
若い人たちは、軽くこの言葉を口にするらしい。以前、職場のアルバイトさんに
「悪いけど、この仕事やっといてくんない」と頼んで、「ムリ」と言われたことがある。
おそらく彼は、「いま他の仕事を頼まれているので、できません」という程度のことを言いたかったのだろうが、オヤジの耳にはそうは聞こえない。
「オレにそんな仕事を頼むなんて、アンタどうかしてるぜ」
大げさに言うとこんなニュアンスに聞こえる。「ムリ」は「無理」とは違うんだと弁解しても、それこそ無理というもの。「無理」とは「理(ことわり)がない」つまり「道理がない」「理不尽」という意味が元々あって、そこから転じて、だから「(とてもじゃないが)できない」という意味に使われる。元はかなり重たい意味なのだ。
以前、サラリーマン川柳にこんな句があった。
「無理をさせ 無理をするなと 無理を言い…」
これが正しい「無理」の使い方であって、こういう使い方なら無理がない。
ところで、若い人たちが使う「ムリ」には、これとはまた全然違う使い方があるらしい。
あるとき、仕事で名古屋市子育て家庭優待カードのゆるキャラ「ぴよか」を連れて名古屋の中心街を練り歩いていたときのこと。バス停で停車したバスから勢いよく降りてきた二人連れの女子高生の目の前に「ぴよか」がいた。いきなり「ぴよか」と鉢合わせた彼女たちは、腰を抜かさんばかりに驚いて「キャー、キャー」と黄色い歓声をあげながら、目の前で愛嬌を振りまく「ぴよか」を指さして、「ムリー! ムリー!」と叫んだのである。そして最後の締めは、「ぴよか」に抱きつき愛しげに頬ずりしたのであった。
ああ、「私は『ぴよか』になりたい」心からそう思った瞬間だった。
おっと脱線したが、この場合の女子高生が発した「ムリー!」を翻訳することは私には無理としても、少なくとも、彼女たちにとってのその場面における最上級の賛辞であったことは間違いない。
こうしてみると、若者言葉も奥が深い。
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